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2024年度

2024年7月19日

『岩石薄片教室』のご報告
 2024年7月13日(土)に『偏光顕微鏡の見方教室』,14日(日)・15日(月・祝)に『薄片作製教室』を実施しました.
7月13日 偏光顕微鏡の見方教室
薄片を観察する様子
 『偏光顕微鏡の見方教室』では,まずは身の回りにはどのような岩石があるのかを紹介した後に,偏光とは何か・偏光で見ることでどのような観察ができるのか、簡単に説明がありました.その後,花崗岩に含まれる石英・長石・雲母や玄武岩に含まれるカンラン石・輝石・斜長石など,代表的な造岩鉱物を実際に観察する中で,偏光顕微鏡の扱い方を学んでいただきました.
 偏光板を入れた時の薄片の見え方やステージを回転させるごとに消えたり現れたりする様子は,初めて観察する方にとっては新鮮であったと思います.偏光板の出し入れを繰り返して,偏光板を入れた時・抜いた時の両方の特徴を意識しながら観察するのは難しかったようですが,それでもみんな少しづつ偏光顕微鏡観察に慣れていきました.
7月14、15日 薄片作成教室
薄片を作成する様子(7月14日)
 『薄片作製教室』では,まずは薄片作成の手順についての説明がありました.いい薄片を作成するためには薄片の厚さを均等にしなければいけませんが,そのためにはまずはスライドガラスに張り付ける岩石チップが平らになっている必要があります.これが薄片作成の中で最も肝心なのですが,幸い今回の教室ではあらかじめ指導者の一人である北川さんがやってくださっており,受講者はスライドガラスに岩石チップを張り付けた段階から始めることができます.
 手順の説明の後,それぞれ3枚好きな岩石を選択して薄片作成開始.まずはダイヤモンドカッターで0.5~1㎜程度に二次切断し,そこから鉄板で320番の研磨剤を使って粗削りしていきました.岩石により難度は異なりますが,みんな慎重に一枚目のチップを適度な薄さを目指して粗削りしていきました.二枚目・三枚目のチップになると慣れてきたのこともあり比較的早く粗削りを終える方もいましたが,中には岩石ごとの硬さを読み違えて岩石チップを一部削り飛ばしてしまう方もいました.
薄片を作成する様子(7月15日)
 粗削りが終わったら次はガラス版で1000番の研磨剤を使って薄片を仕上げていきます.薄片の作製で最も難しいのは,最後の仕上げで,スライドグラスに張り付けられた岩石片を0.02~0.03㎜の厚さまで薄くすることです.石英や斜長石の多い岩石はそれを偏光顕微鏡で見ることで厚さを測ることができますが,それらがない場合は難しいです.片減りしないように頻繁に厚さを確認しながら研磨していき,何とか適度な薄さまで仕上げました.最後はカバーガラスをかけて薄片の完成.完成した薄片の顕微鏡写真を撮影して終了しました.
 岩石薄片の偏光顕微鏡観察は,岩石種や岩石に含まれる鉱物種を決定するにあたりとても重要な観察方法です.今回の参加された方はこれをきっかけにして,自身でも岩石薄片作成にチャレンジしてみてはいかがでしょう.会員の方であれば,益冨地学会館でも作成することが可能です.

2024年5月22日

『野洲川のかわらの石観察会』の報告
 2024年5月19日(日)に,『野洲川のかわらの石観察会』を実施いたしました.また,それに向けて5月12日(日)に益富地学会館にて『野洲川のかわらの石観察会・事前講習会』を行いました.
5月12日 事前講習会
事前講習会の様子
 事前講習会は午前・午後それぞれ定員20名の講習会でしたが,両方ともほぼ満席状態でした.
 講習会は最初,大井(会館主任研究員)より石(岩石)がどのようにできるのか・滋賀県の地質の特徴についての説明があり,その後に藤原(会館上席主任研究員)より観察地(野洲川の川原)で見ることのできる石の種類と特徴についての説明がありました.また講習最後には,講習用に用意していた野洲川の川原の石を実際に観察しました.
 この講習の中で,花崗岩・付加体の砂岩・泥岩・チャートなどが多いと予想されること,運がよかったらきれいな桜模様の見える菫青石ホルンフェルスが発見できることなども説明しました.
5月19日 かわらの石観察会
かわらの石を観察する様子
 前日の気象庁の降水確率は,6-12時が20%・12-18時が50%であり,18時に近づくほど降水確率が上がることが予想されたため,雨が降ることを恐れつつも開催することにしました.当日朝になると,6-12時が40%・12-18時が70%とさらに降水確率が上がり,雨具が必要な天候が予想されました.
 11:00にJR三雲駅に集合,天候が不安定な中でも80名ほどの方が参加してくださいました.三雲駅から移動して野洲川のかわらへ移動.注意事項や観察できる石(岩石)の特徴について簡単な説明の後,かわらの石を観察しました.
 事前情報では花崗岩が多いことが予想されましたが,どちらかというと花崗斑岩など比較的冷却の速い岩石の方が多くみられました.また.泥岩・砂岩・チャートについては事前情報の通り多くみられました.
かわらに転がる亜炭
 中には長さ1cmを越える角閃石の結晶を含むトーナル斑岩を見つけたり,石英脈中の空洞に水晶を見つけたりする人もいました.また,私は確認できませんでしたが,きれいな菫青石ホルンフェルスを見つけた人もいたそうです.
 観察地のすぐ上流には約250万年前の古琵琶湖層群の地層が出ており,そこでは亜炭層を観察することができます.そのためか観察地のかわらでも亜炭を見つけることができました.ちなみに今は流されてしまい観察できなくなってしまいましたが,観察地より野洲川下流に30分ほど歩いた地点はゾウの足跡化石の観察ポイントとして有名でした.
 12時頃までは雨具なしでもそれほど気にならない程度でしたが,12:30になると雨具なしではつらい天候となりました.石は乾いている状態・濡れた状態で見た目が異なる場合も多く,石の種類を判別するのも難しくなりました.天候が不安定であるため,各自の判断で自由解散でもよいことにしていましたが,それでも7~8割の参加者が13:30の解散時間までかわらに残っていました.
 今回の観察会は天候には恵まれませんでしたが,何とか無事に終わることができました.

2024年4月16日

京都市大文字山・如意ヶ岳地学観察会の報告
 2024年4月14日(日)に,京都市大文字山・如意ヶ岳地学観察会を実施いたしました.銀閣寺橋の西付近に9時00分に集合しました.当日は天気も良く,絶好のハイキング日和でした.また今年の桜は遅咲きであったため,満開は過ぎているもののまだ花が残っており,花びらの絨毯が哲学の道沿いの疎水に敷かれていました.
 この日は福井さん,秦さん,藤原,大井の4人が指導員として案内いたしました.またボランティアスタッフの上川泰知さん,川内天さんの2人にお手伝いいただきました.
 まずは銀閣寺門前の石畳について説明がありました.本日の参加者は40名おり通行人の邪魔になる恐れもあるため,ここでは細かな説明はなく,「本日出てくる岩石は,花崗岩・チャート・ホルンフェルスの3つであること」「銀閣寺門前の石畳は菫青石という鉱物の入ったホルンフェルスであること」「菫青石が雲母などに変質すると,桜の花びらのような模様になること」「銀閣寺門前の石畳をよく探すと,桜の花びらのような模様が入った菫青石ホルンフェルスが発見できること」が語られました.
 実際に観察と行きたいところでしたが,銀閣寺門前をふさぐことになる恐れがあるため断念して,次の目的地へと移動しました.
 続いては大文字登山道入り口手前でチャート層および鹿ケ谷断層がみられる露頭に到着.崩落防止のため金網がはってありましたが,チャート層はよく観察できました.また地質図にチャート層と鹿ケ谷断層が描かれていることを確認しました.
 登山道に入りしばらくすると砂防ダムに到着.通行の邪魔にならないようなスペースもあったため,ここで本日の観察会で見られる岩石・鉱物についての細かい説明がありました.ホルンフェルスはもともと海に堆積した砂岩や泥岩であり,それが花崗岩の熱によりホルンフェルスになったこと等の説明がありました.さらに花崗岩が風化されやすいために大文字山→比叡平→比叡山と続く地形ができていることや,花崗岩由来の土砂が白い砂として流れたために白川と呼ばれたこと等の説明もありました.また本日の観察会では,石英・長石・黒雲母など花崗岩にありふれている鉱物の他に,菫青石・褐簾石・鋭錐石という3つの鉱物が登場することも述べられました.ちなみにこの砂防ダムの川砂をパニングすると,褐簾石や鋭錐石が見つかるそうです.
 登山道をさらに進み,やや険しい谷を登った後に次の目的地である太閤岩に到着.「太閤」と名がつくくらいで豊臣秀吉の時代から使われていた石切り場の跡です.花崗岩は石英・斜長石・カリ長石の量比でさらに細かく分類されるのですが,ここでは2種類の花崗岩が登場します.
 一つは黒雲母花崗岩で,この地域一帯に広く分布する岩石です.もう一つは石英モンゾニ岩で,太閤岩近辺にしか出ません.
 ややこしい話なのですが,太閤"岩"は場所を指す言葉になります.一方でこの場所の石英モンゾニ岩は太閤"石"と呼ばれています.石英モンゾニ岩という言葉は聞きなれない用語のため,この日は2種類の花崗岩を「花崗岩」と「太閤石」という呼び方で分けていました.
 「花崗岩」には褐簾石が,「太閤石」には鋭錐石が含まれているのですが,鋭錐石はめったに見つけることができません.そのためここでは褐簾石に照準を絞って観察しました.褐簾石を探すためには,2つの試練を突破しなければいけません.
 1つ目は「花崗岩」と「太閤石」の区別です.両方とも花崗岩であるため,風化してしまうと見た目の色や質感で判断するのは困難になるのですが,「太閤石」は石英があまり含まれていないという特徴があるので,ここではそれで両者を区別すると良いです.
 2つ目は「褐簾石」と「黒雲母」の区別です.シャープペンシルの芯のような柱状の結晶ですが,劈開面が寝ている黒雲母も柱状と錯覚するような見え方になり区別が困難です.それでも時間がたつにつれて目が慣れてきたのか多くの人が立派な褐簾石を発見することができました.
 太閤岩で1時間ほど過ごしたのち,次の目的地へと向かいます.途中長い階段を越えて,大文字の送り火の火床周辺で小休止し,その後大文字山の山頂へと登りました.山頂では45分ほどのお昼休憩を取りました.山頂および山頂付近にはチャート層が出ているのですが,ここではその説明は割愛しました.
 山頂を越えて池ノ谷地蔵へと向かう山道の途中に菫青石ホルンフェルスを観察できる谷があります.菫青石ホルンフェルスの中には,ガラス質の新鮮な菫青石が残っているものもありました.また,程よく変質して桜の花びらのように見える菫青石仮晶もありました.この谷のすぐ下には花崗岩が分布しているため,ここは花崗岩とホルンフェルスの接触部付近という事になります.疲れもあるため,この場所で50分ほど過ごした後に出発しました.
 この先に,花崗岩の洞窟やスカルンの露頭などの見どころがあるため,本来であればそれらの地点を巡った後に比叡平からバスで帰るのですが,最近は本数が減ってしまいバスに乗るのが難しくなったため,歩いて銀閣寺まで戻りました.
 大文字山山頂,大文字送り火周辺までは来た道をそのまま戻りましたが,ここからは来た道とは別のルートを通りました.「大」の字の左のはらいの階段を下り,「千人塚」へ行きました.千人塚では昔は菫青石ホルンフェルスがよく取れたらしいのですが,今ではあまりとれないことが語られました.
 一行はそのまま銀閣寺門前へと戻り,そこで解散となりました.解散後,出発時は観察を割愛した銀閣寺門前の菫青石ホルンフェルスを観察する参加者の方もいました,4時ごろで人通りも少なかったこともあり,石畳の菫青石ホルンフェルスの花びらをゆっくりと観察することができました.
 今回は天候に恵まれたこともあり,気持ちの良い観察会となりました.

2024年4月3日

地学研修会『滋賀県日野町と多賀町へ採集・観察・見学会』の報告
 2024年3月31日(日)に,地学研修会『滋賀県日野町と多賀町へ採集・観察・見学会』を実施いたしました.京都駅八条口アバンティー前《団体バス乗り場》に7時50分に集合し,滋賀県へと出発しました.今回の目的地は,①滋賀県蒲生郡日野町石子山・②日野町鎌掛(かいがけ)の天然記念物『鎌掛の屏風岩』・③滋賀県犬上郡多賀町『多賀町立博物館』の三ヵ所です.また益富地学会館の運営委員である黒栁信之氏のご尽力により,①の日野町石子山で鉱物採集することができました.
 10:00にバスは日野町の鬼室神社前に到着,そこから15分ほど歩いて石子山の鉱物採集地点に到着しました.石子山花崗岩の中には微細晶洞に富んでいる物もあり,その中にはきれいな水晶などがあります.ハンマーで岩石を割って微細晶洞を探す人もいれば,転石をひっくり返して探す人もいましたが,ほとんどの参加者の方が微細晶洞の水晶を発見することができました.また参加者の中には,少し青みがかったカリ長石である天河石(アマゾナイト)を発見できた方もいました.
 お昼ご飯を食べつつ12:40まで鉱物採集を続けました.
 13:00頃にバスに戻り次の目的地である日野町鎌掛(かいがけ)の天然記念物『鎌掛の屏風岩』に向かいました.石子山から鎌掛への最短ルートはバスでは通れないような細い道路があるため,少し迂回して進み13:30頃に鎌掛(かいがけ)に到着しました.バスから降りて5分ほど歩くと鎌掛の屏風岩がありました.泥岩と層状チャートの互層による層理面とそれに直交する節理面が,まるで四つに折れる屏風が山の中腹に直立して見えることから,屏風岩と呼ばれています.現在は露頭が草木に覆われているため感動は薄れてしまっていますが,往時の景観を想像することができました.
 14:00頃に次の目的地へと出発,15:00頃に多賀町立博物館(あけぼのパーク多賀)に到着しました. 多賀町立博物館はアケボノゾウの化石をはじめ,滋賀県の自然関係の展示が充実しています.またこの日は,ワニ化石に関する企画展が行われていました.学芸員の阿部勇治先生にアケボノゾウをはじめ化石に関する解説や裏話を色々と聞かせていただき,その後、1時間ほど博物館内を見学させていただきました.
 16:40頃にバスは京都駅に向けて出発,草津周辺で30分ほど渋滞に巻き込まれましたが18:30分ごろに無事に京都駅に到着.当たりはずれはあったものの,全員石子山の鉱物を採集することができ,充実した採集会となりました.
公益財団法人 益富地学会館
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中出水町394
電話:075-441-3280
FAX:075-441-6897

【開館時間】10:00~16:00
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