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2023年度のアーカイブ

2023年11月29日

京都西山地学ハイキングの報告
行程に関する説明を聞く様子(高田ミュージアム駐車場にて)
 2023年11月26日(日)に,野外観察会『京都西山地学ハイキング』を実施いたしました.京都西山ハイキングは,今年3月に行う予定だったところ雨のために中止になってしまったイベントでした.リベンジの意味合いもありましたが,今回はいい天気に恵まれて無事に開催することができました.今回のイベントは11月9日より会員の申込みを開始しましたが早々に定員が埋まってしまったため,参加できなかった方がおられましたこと,まずはお詫び申し上げます.
 今回の採取する物は,石灰岩礫岩中のフズリナ化石等です.10時10分ごろに阪急バス『灰方』バス停に集合し高田ミュージアムにてお手洗いを借りた後に,採取場所に向けて出発しました.
ロープを使って急な坂を上る様子
 目的地は集合場所より4kmほど山を登った場所になります.幸い行程のほとんどは車の通れるような舗装された道のため,問題なく進むことができました.出発してから約1時間半ほど歩いた先,金蔵寺を少し通り過ぎて目的地に到着.採取場所は車道より高いところにあり,ロープを用いて急な坂をあがりました.11時45分ごろに採取場所に到着,そこで藤原さんより今回採取する化石や岩石の特徴の説明がありました.
 今回の採取場所は丹波帯II型地層群田能コンプレックスに相当します.そこの暗赤褐色の玄武岩質凝灰岩の石灰岩や石灰岩レキ岩の中にフズリナやウミユリなどの化石を見つけることができます.
採取地点で採種するようす
 お昼ご飯を食べながら化石採取をおよそ1時間ほど行いました.木が茂っていたため,場所によっては明るい太陽光の元でルーペを用いてまじまじと観察することが難しかったですが,それでもほとんどの参加者がフズリナの化石を手に入れることができたのではないかと思います.また余談ですがこの日は紅葉のタイミングにも恵まれており,採取地点でもきれいな紅葉を観察することができました.
 13:00頃に採取終了.再びロープを用いて急な坂を下った後に,舗装された道を下りていきました.下り坂を約1時間歩き,14:00頃に高田クリスタルミュージアムに帰ってきました.
高田雅介館長が説明してくださる様子
 高田クリスタルミュージアムでは館長の高田雅介先生より展示について説明していただきました.また,高田雅介先生は結晶形態に関する造詣が深く,それに関する学術的な背景や歴史についてわかりやすく説明してくださいました.そのまま高田クリスタルミュージアムで解散.解散後は,展示室隣の『CAFE クリスタル』で食事や喫茶あるいは買い物を楽しむ者もいたり,「鉱物と結晶の博物館(分館)」に訪れる者もいたりと様々でした.
 今回の野外観察会は4kmの登り降りがあったため,足への負担などは大きかったですが,参加者の皆様には満足していただけたのではないかと思っています.

2023年11月14日

地学研修会『武庫川かわらの石観察会』の報告
講習会の様子
 2023年11月11日(土)に,地学研修会『武庫川かわらの石観察会』を実施いたしました.益富地学会館恒例のかわらの石観察会ですが,武庫川で観察会を行うのは今回が初めてです.またこれまででしたらはかわらの石観察会の事前講習会は,益富地学会館にて1週間前に行われてきましたが,今回は宝塚市立公民館を借りてかわらの石観察会当日に講習会を行いました.
 前日は雨が降っていましたが,増水を心配するほどは降っておらず,またこの日は降水確率が低かったため無事に実施することができました.一行は阪急今津線の逆瀬川駅に10時に集合して宝塚市立公民館へと向かいました.
事前に採取した標本を観察する様子
 宝塚市立公民館に到着後,まずは益富地学会館研究員の大井による講習がありました.ここではかわらの石の観察地の上流には六甲花崗岩や有馬層群があることや,有馬層群が流紋岩質のマグマの噴火でできていること,その噴火の際の火砕流には火山灰や火山レキが含まれておりそこからは様々な種類の岩石ができることなどの説明がありました.講習の後はスタッフが事前に拾った観察地の岩石を観察しながら,昼食を食べました.
かわらで観察する様子
 お昼ご飯を食べて12:30頃に公民館近くの武庫川かわらの石の観察地に移動しました.今回の観察地では六甲花崗岩,有馬層群の流紋岩類を主であり,たまに丹波帯の岩石(チャートなど)が観察できました.六甲花崗岩はカリ長石が赤みを帯びているためわかりやすかったのですが,有馬層群の岩石は凝灰岩,角礫凝灰岩,溶結凝灰岩,流紋岩と様々な見かけのものがあり,中には指導員の先生によって意見が割れるようなものもありました.また参加者の中には晶洞を有する花崗岩を採取した方もいました.その晶洞の中は,水晶などのきれいな結晶が観察できました.
古谷先生の講習会の様子
 14:00頃までかわらの石を採取した後は再び公民館に戻り,今度は「兵庫県立人と自然の博物館」の元研究員で現在は「まちなか石ころ研究会」で活躍なさっている古谷先生の講習を聞きました.古谷先生には,武庫川のかわらの石やチャート及び放散虫について教えていただきました.
 古谷先生にご講演いただいた後は,参加者各自が拾ってきた石についてラベルを書きました.新聞紙の上に拾ってきた石を並べ,時には指導員の先生に聞きながら,石に付けるラベルを作成しました.

 その後,15:30分頃に公民会で解散.今回の観察会はこれまでとは異なり,かわらの石を観察する前後に公民館にて勉強会を開催しました.公民館を使用する都合上,参加費をいただく必要が出てきましたが,それでも充実したイベントになったと思います.

2023年11月1日

SEMの近況報告
炭素蒸着機の写真
5月23日の「研究員のつぶやき」で、走査型電子顕微鏡(SEM)の課題を4つ書きましたが、そのうちの2つ
  1. 益富地学会館では炭素蒸着することができない
  2. 益富地学会館では鏡面研磨することができない
について解決することができました.

これにより,益富地学会館内で一通り観察・分析することが可能になりましたので,本日11月1日よりSEMによる観察及びエネルギー分散型X線検出器(EDX)による化学組成分析の依頼を開始したいと思います.
ダイアモンド研磨機

1についてですが,岩石など導電性のない試料に電子線を当てると電子は逃げることができずに試料に帯電してしまい,観察や分析がまともにできなくなります.SEM観察する際は帯電しないための工夫が必要なのですが,その手段の一つが炭素蒸着です.導電性のある炭素の薄い膜を張ることにより試料から電子を逃がすことができるようになります.

2についてですが,試料に凹凸がある場合はSEM-EDXによる化学組成分析の定量性は悪くなります.また後方散乱電子像の輝度と鉱物の化学組成は対応するため,後方散乱電子像の輝度から鉱物種を推定することができるのですが,試料に凹凸がある場合はそれも難しくなります.鏡面研磨することにより,それらの問題を解決することができるようになります.

2023年10月7〜9日

『石ふしぎ大発見展2023・第35回京都ミネラルショー』
 『石ふしぎ大発見展2023・第35回京都ミネラルショー』は,2023年10月7日(土)~10月9日(月・祝)の3日間,京都市勧業館「みやこめっせ」において開催され,無事終了することができました.この催しにご協力をいただいた,全国・海外からの出展業者の方々,様々なご協力を賜った関係者の皆様,またたくさんの来場者の皆様に厚くお礼申し上げます.
 今回は第1展示場(地下1階),第2展示場(1階),と昨年よりもさらに会場を増やし大いに賑わいました.入場についてはご来場者にチケット(1日券700円,3日券1,000円,中学生以下は無料)を事前に購入していただきました.昨年秋の京都ショーでは鉱物に興味を持ち始めた方のための『講習会』のみ,春の大阪ショーでは『講演会』のみを行いましたが,今回は『講演会』と『講習会』の両方を行いました.また『イベント』『特別展示』と『鉱物・岩石無料鑑定会』は昨年同様に開催することができました.
 案内パンフレットと共に入場者全員に,美しい鉱物などがプリントされたショッピングバックがプレゼントされました.また美しい鉱物写真がプリントされた『文庫型メモ』も入場チケットと引き換えに,地下1階の第1展示場にて配布されました.
イベント 『煌めきのパンタゴーヌ』
 「パンタゴーヌ」とはフランス語で五角形を意味する言葉です.このイベントでは石をちりばめた透明板を作成し,それを組み立てて様々な色に輝く五角形のランプを作りました.子供から大人まで光と石の競演を楽しむことができました.
 地下1階第1展示場からよく見える位置で開催されており,展示されているランプにひかれて来る参加者の方もいらっしゃいました.参加費は800円で10月7日~9日の3日間で大勢の方にご参加いただきまいした.
特別展示『日本で発見された新鉱物 I』
 特別展示は,≪日本で発見された新鉱物 I≫というテーマで行いました.
 近畿以東で発見された日本産新鉱物あるいはそれに準ずる標本を約80種100個ほど展示しました.また,日本産新鉱物についてまとめた展示パネルや,それに関わるトピックをピックアップした解説パネルも標本とともに展示しました.さらに小さくて肉眼では見えにくい標本については,拡大した写真とともに標本に関する説明を書いたパネルを展示しました.
 今回の目玉となる標本は,2023年1月に国際鉱物学連合に日本産新鉱物として承認された「北海道石」で,それを見ることを目的として特別展示に来られる方もいました.タイミングによっては係の者が解説とともに紫外線ライトを当てていたため,それに恵まれた方は「光る北海道石」を見ることができました.
講演会
 『講演会』は10月7日(土) 12時30分~,10月8日(日)10時30分~,12時30分~と3つの講演を地下1階大会議室にて実施いたしました.今回の講演会は特別展示のテーマ「日本で発見された新鉱物」に合わせたタイトルで,3人の先生方に講演していただきました.
 公益財団法人相模中央化学研究所主任研究員の田中陵二先生には『北海道石の科学:有機鉱物のルネッサンス』というタイトルで,北海道石を中心にベンゼン環を有する有機鉱物の分析方法や分類などについてご講演いただきました.

 フォッサマグナミュージアム元館長・糸魚川市ジオパーク観光ガイドの宮島宏先生には『翡翠の中の新鉱物たち』というタイトルで,宮島先生ご自身の失敗談やそれを踏まえた上での翡翠の中の新鉱物発見に至る経緯などを説明していただきました.またその中で,翡翠の成因や翡翠の中にSr鉱物が生成される理由なども説明していただきました.
 国立科学博物館名誉研究員の松原聰先生には『日本の新鉱物 -発見から誕生まで-』というタイトルで,どのような時に新鉱物が発見されるか,国際鉱物学連合へはどのように申請してどのように承認されるのか,承認に至る過程などを説明していただきました.また松原先生自身が発表した日本産新鉱物をはじめ,新鉱物に関わる様々なエピソードをお話しいただきました.

講習会『鉱物のABC』
 昨年に引き続き,地下1階大会議室にて10月7日と10月8日の2回行われました.この講習会は和田義彦先生(益富地学会館公認鉱物鑑定士)による鉱物に興味を持ち始めた方のための講習で,鉱物とは何か,鉱物を見分けるためのポイントである色,形,におい,硬度などについて,実物の標本を見たり,実演や実験をしながらわかりやすく説明されました.
 約120分の講習でしたが,大人から子供まで最後まで集中して聞いていました.
 講習会のチケットは入場チケット同様に事前に購入していただいていたのですが,当日飛び入りで講習を聴講したいという方も多く,大勢の方に参加していただきました.
鉱物・岩石無料鑑定会
 『鉱物・岩石無料鑑定会』は10月9日(月祝),11時から12時に地下1階第1展示場にて行いました.70人を超える方々が様々な石を鑑定のために持ち込まれていました.受付開始の10時50分には列ができるほどでした.お1人様2点までだったのですが,中には家族4名で8点持ち込む方もいらっしゃいました.

2023年9月16日

『富士火山地学巡検』の報告 (1日目)
 2023年9月16日(土)~18日(月祝)に,『富士火山違地学巡検』を実施いたしました.今回は3年ぶりの泊りがけのイベントでした。季節柄、台風や雨が心配でしたが幸いなことに3日間とも晴れ予報だったため,あらかじめ予定していた行程で進めることができました.静岡県新富士駅富士山口に10時30分に集合し,あらかじめチャーターしていたバスに乗りました.
 今回の巡検は静岡県富士宮市にある奇石博物館の北垣俊明先生に案内していただきました.
1日目 富士山の湧水
 この日は奇石博物館の北垣先生と森井先生のご協力のもと,富士宮市にある「富士山の湧水」をテーマとして巡検をしました.まずは巡検の解説を聞くために奇石博物館に向かいました.
 奇石博物館は設立に益富壽之助先生もかかわったという事で,益富地学会館とは姉妹のような関係にある博物館です.まずは萩原館長より奇石博物館や益富壽之助先生との関りなどお話しいただいた後,博物館の見学をさせていただきました.
 博物館では最初に,「讃岐石」「コンニャク石」「テレビ石」についての面白い解説をしていただいた後に,展示の見学をしました.科学的な目線のみではなく石の名前や文学的側面などの様々なテーマに沿って展示されていました.じっくりと見学する時間を取れなかったことが残念でしたが,参加者全員それぞれの好みに沿った展示に夢中になっていました.
 博物館見学の後はお昼ご飯を食べながら,北垣先生に3日間の巡検に関する事前学習会をしていただきました.
 次に観光名所にもなっている「音止の滝」および「白糸の滝」に行きました.北垣先生より,白糸の滝で白糸溶岩が古富士泥流堆積物の上に重なっており,その上に柱状節理がある様子を説明していただきました.また,どこから白糸の滝の水が出ているのか,芝川の右岸と左岸で滝がどのように分布しているか,白糸の滝の水量がどのように変化しているのか,白糸の滝の滝口上のお鬢水などの説明の中で,白糸の滝の湧水の秘密についても解説していただきました.
 続いて行ったのは「陣馬の滝」です.五斗目木川にかかる滝で、源頼朝が富士の巻狩りで近くに陣を張ったことから「陣馬の滝」と呼ばれています.ここを流れる水はひんやりとして冷たく,暑さを忘れるぐらい心地の良い空気が流れていました.
 陣馬の滝では,古富士火山の岩屑なだれ堆積物の上にローム層,横手沢溶岩流,猪之頭溶岩流が重なっている様子が観察できます.ここでは五斗目木川の転石の観察と採取が行われ,益富地学会館が普段行っているかわらの石の観察会のような雰囲気となりました.
 この辺りには,湧水のきれいな水を利用した鱒の養殖及びわさびの栽培がおこなわれていました.
 この後,バスに乗って養鱒漁業組合直営の釣り堀場の上流の湧水まで行き,猪之頭溶岩を採取.薄暗いため見えにくかったのですが明るいところで見るとカンラン石が良く見える溶岩でした.その後にもう一度奇石博物館にて勉強会をしたのですが,そこでは北垣先生より奇石博物館の近くに分布する安母山溶岩をいただきました.
 1日目はこれで終了,ホテルに行って皆それぞれに疲れをいやしました.

2023年9月17日

『富士火山地学巡検』の報告 (2日目)
 2日目,朝7時より皆で朝食を食べて7時50分にホテルを出発.コンビニでその日の水分や食料を買いつつ,まずは奇石博物館に向かいました.
2日目 宝永山(富士山6合目、江戸時代の噴火の痕跡)
 二日目は奇石博物館の北垣先生と石川先生のご協力のもと,この巡検のメインスポットである宝永山に行きました.この日もまずは解説を聞くために奇石博物館に向かいました.
 北垣先生より宝永噴火及びその日の観察のポイントを聞いたのちに富士宮5合目へ出発.連休ということもあり一般車両の駐車場がいっぱいになっていたため下り車線を駐車場として用いており,上り車線の片側交互通行となっていました.
 富士宮5合目で下車した時にまず見えるのは,上に聳え立つ富士山の頂と下に広がる見事な雲海でした.
 要所ごとに北垣先生より富士山の転石の種類,特徴,それらと噴火イベントの関係などを説明していただっきながら,一行は宝永第一火口へと向かいました.同行していただいた石川先生は植物のスペシャリストで,この日は岩石の他に植物についても色々とお話を聞かせていただきました.宝永山に向かう途中で「雷か?」と思えるような轟音が響き渡ったため「宝永山行きは中止か?」と頭をよぎりましたが,この音は陸上自衛隊の御殿場の演習場からのものとわかり安心しました.6合目の「雲海荘」からしばらく歩くと,宝永山及び宝永山の火口が見え始めました.
 宝永第一火口へと下り,北垣先生に紡錘状,リボン状,パン皮状の火山弾について説明していただいた後に,宝永山や火口列,火山弾を観察しつつお昼ご飯を食べました.
 宝永第一火口から第二火口への少しきつめの坂を下り,樹林帯を抜けてバスに到着.バスを降りてから4時間半の行程だったので,全員疲れた様子でした.出発時は使用できていた5合目のトイレが,到着時には使用不可となっていたため,水ヶ塚公園にてトイレ休憩.その角度からは宝永火口列が良く見え,これまで見たことのない富士山の顔を拝むことができました.
 次の目的地は御殿場口の方にある「太郎坊」.ここでは,宝永噴火の最初の数時間に噴出した軽石を観察しました.この時の噴出物が当時東京に降り注いだ火山灰であるとのことでした.
 太郎坊を出発して次に向かったのは,巨大な蟻塚状の溶岩樹型が観察できるポイントです.3日間で唯一雨の中の観察となりました.富士宮口5号目で雲海を見ていましたが,おそらくこのポイントはその時に見えていた雲の中に相当する高さだったのでしょう.
 樹形は深さが約270cm,直径が約170~180cmあり,中を覗くとその巨大さを実感することができました.」
 2日目はここで終了.1日目よりもたくさん歩いたため,皆へとへとになっていました.昨日と同じホテルへ戻り,それぞれに疲れをいやしました.

2023年9月18日

『富士火山地学巡検』の報告 (3日目)
 3日目も昨日同様に朝7時より皆で朝食を食べて7時50分にホテルを出発.コンビニでその日の水分や食料を買いつつ,まずは奇石博物館に向かいました.この日は時間の都合もあり,奇石博物館ではトイレのみをお借りしました.この日も北垣先生と石川先生のご協力のもと,山梨県の鳴沢村への巡検に行きました.
3日目 氷山火口列(鳴沢村、平安時代の噴火の痕跡)
 まずはトイレ休憩を兼ねて「道の駅なるさわ」へ行きました.道の駅なるさわでは山梨県のお土産や地域の特産品など魅力的なものも販売されておりましたが,開店して間もないという事もありお会計レジのには長蛇の列ができており,時間の兼ね合いもあって購入することはできませんでした.
 道の駅なるさわには青木ヶ原溶岩の露頭も観察できるため,トイレ休憩後に北垣先生より溶岩トンネルのでき方やトンネル内の溶岩の固まり方,その時に溶岩に含まれるガスの挙動などを説明していただきました.また,大人もかろうじては入れるぐらいの大きさの溶岩樹形も観察することができました.
 続いては本日のメインイベントである氷穴火口列が観察できるポイントへと出発しました.バスでふじてんスノーリゾートの入り口まで移動した後に舗装された道を歩きました.途中で天神山が噴火した際のスコリアが観察できるポイントで説明を受けつつスコリアを採取しました.
 さらに舗装された道を進んだのち,富士スバルラインへと続く林道(所要時間は342分)に入っていきました.林道入ってすぐの場所には長尾山が噴火した際のスコリアが観察できるポイントがあり,そこでも説明を受けつつスコリアを採取しました.
 林道をさらに奥に進んだ先には,お待ちかねの氷穴火口列がありました.火口列とは溶岩トンネル関連のイベントでできた穴が直線状に並んだものなのですが,それが一目で理解できるような地形でした.穴のでき方には2種類あり,火口の噴出によりできる場合とトンネルの天井の落下でできる場合があるそうですが,周囲に噴出物があるかどうかで形成過程が判断できるそうです.
 氷穴火口列を見終えて一行はバスへと戻りました.氷穴火口列への行程でスイバ,アケビ,サルナシなど口に入れることのできる植物も多くあり,石川先生に教えていただきながらそれらを堪能しました.
 トイレ休憩のために再び道の駅なるさわヘ.今度は長蛇の列が解消されていたため,短時間ですが買い物をすることもできました.
 道の駅なるさわの裏手側へとバスへ移動し,ジラゴンノ運動場脇でおそらく溶岩樹形であったと思われる地形を観察しました.看板にはスパイラクルと書かれてあるため所説あるようですが,溶岩樹形とする根拠も含め北垣先生より説明していただきました.
 山梨県鳴沢村を離れて一行は奇石博物館へ移動.そこでトイレ休憩をはさんで北垣先生,石川先生とお別れした後に新富士駅へと向かいました.3連休という事もあり道が混むことが予想されましたが,幸い渋滞に引っかかることもなく無事に新富士へと到着.充実した地学巡検となりました.

2023年5月23日

SEM-EDXの近況報告

SEM-EDXに関する近況報告をしたいと思います。

SEM-EDX(HITACHI S-3000H)について3月中旬よりトラブルで使用することができない状態にありましたが、本日ようやくトラブルが解消して使用できる状態になりました。

しかし依然、下記4つの課題を抱えています。
  • 益富地学会館では炭素蒸着することができない
→ 近日できるようになる予定です。
  • SEM制御用PCの関係で、撮影した画像データを他に移すことができないです
→ 画像データ少量づつなら可能ですが、多量の画像ファイルを移すことは今後もできない可能性が高いです。
  • 益富地学会館では鏡面研磨することができない
→ 近日中にできるようになる予定です。
  • 標準試料の用意ができていない
→ まだ準備に時間がかかると思います。

2023年4月9日

地学研修会 『和歌山県広川町・湯浅町方面へ観察会』の報告
 2023年4月8日(土)に,地学研修会『和歌山県広川町・湯浅町方面へ観察会』を実施いたしました.今回は久しぶりにバスをチャーターしてのイベントでした。
 前日まで雨が降っていましたが,この日は降水確率が低く無事に実施することができました.
 京都駅八条口アバンティー前《団体バス乗り場》に7時50分に集合し,和歌山へと出発しました.
 今回は和歌山県立自然博物館学芸員の小原正顕先生にご指導いただきました.小原先生は古生物の専門家で,和歌山県の地質や古生物について詳しい方です.
 まずは和歌山県の地質及びこの日採取する化石について学ぶために,和歌山県立自然博物館を見学しました.ここでは地質関連の他にも海洋に住む生物の展示も充実していました.
 最初は博物館を自由に見学させていただき,その後に博物館の化石コーナーに集まり、小原先生に化石展示及びこの日採集する化石について解説していただきました.
 和歌山県自然博物館には左の写真のように見事なモササウルスの化石が展示されていました,
 お昼12:00頃に有田郡広川町和田に到着(4/21日追記 採集地は「広川町和田」ではなく「広川町山本」でした),少し急な階段を下りて海岸へと降りて化石の採集地に到着.まずは小原先生に湯浅層で採取できる化石を教えていただきました.
 ここでは主に貝化石が採集可能なのですが,湯浅層としては恐竜の歯の化石が出土するそうです.
 お昼ご飯を食べつつ化石の採集,さすがに恐竜の化石は見つかりませんでしたが,2時間弱の採集時間の中でほとんどの参加者の方が貝化石を見つけることができました.
 海岸を出発した後にトイレ休憩.湯浅町は醬油や金山寺味噌でも有名であるため,休憩場所のお土産屋さんで醤油・味噌・ミカンなどを買う人が続出.レジに行列ができるような状態になってしまったのもいい思い出かと思います.
 続いては有田郡湯浅町栖原の採石場跡にて有田層の化石を採集しました.ここではアンモナイト・ウニ・貝類などの化石が出土するそうです.
 ここはものによってはハンマーを使わなくても,手で割ることができるぐらいもろい転石が多く転がっていました. 
 流石に疲れが見え始めたり,午後3時半ごろを過ぎると少し肌寒くもなったりとありましたが,中にはアンモナイトの化石や立派なウニの化石を見つける方もいました.
 ここでの採集が終わった後,小原先生より持ち帰った後に化石のラベルを付けること,特に産地の情報が必要であることを教えていただきました.
 帰りのバスは,さすがに疲れているために寝ている人も多かったですが,19:00前に無事京都駅に到着.
 充実した採集会となりました.

2023年3月2日

研究室のリニューアル + SEM-EDXの近況

研究室の床の張替えに伴い、机などを新しくしました。
明るい色になり明るく見えます。

床の張替えに伴い机や棚の整理に時間が取られてしまい、なかなか他の業務が進みませんでしたが、ようやく時間が取れるのではないかと思っています。


またついでといっては何ですが、この場でSEM-EDXに関する近況報告もしたいと思います。
益富地学会館はSEM-EDX(HITACHI S-3000H)について、現在以下の4つの課題を抱えています。
 ・ 益富地学会館では炭素蒸着することができない
 ・ SEM制御用PCの関係で、撮影した画像データを他に移すことができないです
 ・ 益富地学会館では鏡面研磨することができない
 (定量性の良い化学組成分析をしたい場合は、鏡面研磨する必要があります)
 ・ 標準試料の用意ができていない
なので今現在は益富地学会館の機器のみで定量性を考えた分析はできません。
上記4つの課題にどのように対応するか、今後考えていきます。

ちなみに下記の観察内容であれば可能です。
 ・ 導電性の良い試料あるいは炭素蒸着した試料の観察(ただし画像データを持ち帰ることはできません)
 ・ 定量性にこだわらない化学素組成分析

2023年1月9日

県の鉱物  
 年末の会館の大掃除の時、ひょんな事から 「地学研究 第47巻第4号(1999年4月発行)」 に「全国都道府県別『県の鉱物』試案」というタイトルの投稿があることを知りました(著者は岡本鑑吉さんです)。
 近年、地質学会により県の石(岩石・鉱物・化石)が選定されましたが、20年ほど前にも似たような試みが地学研究にあったのは驚きです。岡本さんの選んだ県の鉱物と地質学会が選んだ県の鉱物を表にしてまとめてみましたので見比べて楽しんでみてください。
 両者の比較に対するコメントは控えさせていただきますが、両者ともに様々なことを思案しながら選定したことが感じられます。

 
  
地学研究(岡本 ; 1999)
 
地質学会
都道府県名
産地鉱物名
産地鉱物名
北海道 道内全域砂白金(イリドスミン) 北海道中軸部砂白金
青森県 恐山石黄 尾太鉱山菱マンガン鉱
岩手県
仙人鉱山赤鉄鉱
釜石市鉄鉱石
宮城県
雨塚山紫水晶
のの岳、涌谷砂金
秋田県
玉川温泉北投石(含鉛重晶石)
北鹿地域黒鉱
山形県
五十川方沸石
小国町ソロバン玉石(カルセドニー)
福島県 水晶山フェルグソン石 石川町ペグマタイト鉱物
茨城県
妙見山リシア電気石
妙見山リチア電気石
栃木県
猪倉トルコ石
足尾鉱山黄銅鉱
群馬県
西牧鉱山鶏冠石
西牧鉱山鶏冠石
埼玉県
朝日根パンペリー石
長瀞町スチルプロメレン
千葉県
太海ソーダ沸石
房総半島千葉石
東京都
三宅島カンラン石
小笠原諸島単斜エンスタタイト
神奈川県
玄倉燐灰石
湯河原町湯河原沸石
新潟県 小滝・青海ヒスイ輝石 佐渡金山遺跡自然金
富山県
宇奈月十字石
宇奈月十字石
石川県
恋路あられ石
能登町恋路霰石
福井県
赤谷鉱山自然砒
赤谷鉱山自形自然砒
山梨県
水晶峠水晶(石英)
乙女鉱山日本式双晶
長野県
和田峠マン礬石榴石
和田峠ざくろ石
岐阜県
恵那・蛭川地方ペグマタイト(黒水晶・長石の結晶)神岡鉱山ヘデン輝石
静岡県
河津鉱山自然テルル
河津鉱山自然テルル
愛知県 田口鉱山パイロクスマンガン石 瀬戸市カオリン
三重県
宮津京ガドリン石
丹生鉱山辰砂
滋賀県
田上山トパーズ
田上山(大津市)トパーズ
京都府
稗田野桜石(菫青石仮晶)
亀岡市桜石(菫青石仮晶)
大阪府
泉南ドーソン石
泉南ドーソン石
兵庫県
加保ソーダ雲母
黄銅鉱明延鉱山
奈良県
二上山サファイア
二上山ざくろ石
和歌山県
太地玻璃長石
太地町サニディン
鳥取県 人形峠リン灰ウラン石 日南町多里クロム鉄鉱
島根県
玉造碧玉(石英)
石見銀山自然銀
岡山県
布賀スパー石
人形峠ウラン鉱
広島県
瀬戸田斜開銅鉱
庄原市勝光山蝋石
山口県 長登鉱山輝コバルト鉱 長登鉱山銅鉱石
徳島県
眉山紅簾石
眉山紅れん石
香川県
鷲ノ山菱沸石
猫山珪線石
愛媛県
市ノ川鉱山輝安鉱
市之川鉱山輝安鉱
高知県
穴内鉱山チンゼン斧石
高知市蓮台ストロナルシ石
福岡県
長垂山紅雲母
福岡市長垂リチア雲母
佐賀県
杉山緑柱石
富士町杉山緑柱石
長崎県
大串・鳥加磁鉄鉱
奈留島日本式双晶・水晶
熊本県
護王峠普通角閃石
阿蘇山周辺鱗珪石(トリディマイト)
大分県
木浦鉱山異極鉱
尾平鉱山斧石
宮崎県
土呂久鉱山タンブリ石
土呂久鉱山タンブリ石
鹿児島県
隼人町又は県下大隅石
菱刈金山金鉱石(自然金)
沖縄県 読売村マンガンノジュール 沖大東島リン鉱石

公益財団法人 益富地学会館
〒602-8012
京都市上京区出水通烏丸西入
中出水町394
電話:075-441-3280
FAX:075-441-6897

【開館時間】10:00~16:00
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