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おいしい水をつくる石「麦飯石(ばくはんせき)」

麦飯石は、中国・明代の漢方書として有名な、李時珍著『本草綱目』に石の薬として記述されています。ここでは麦飯石の名前の由来は、外観が麦飯の握り飯ように見えることから名付けられたと記されています。このように麦飯石は中国が原典の石ですが、現在日本では水をおいしくする石として一般に広く知られています。

美濃白川産の麦飯石

石薬の研究家であった益富壽之助博士は、岐阜県加茂郡白川町黒川中切産の炭酸化作用を受けた花崗斑岩を「麦飯石」と同定し、おいしい水をつくる石として推奨されていました。

益富博士が麦飯石と同定された白川町黒川中切産の花崗斑岩という岩石は、花崗岩や花崗閃緑岩と同じような成分を持つ半深成岩の一種です。花崗斑岩は、長石(カリ長石及斜長石)・石英・雲母などからなる斑状の岩石で、大きな長石・石英の斑晶と、そのあいだを埋める細粒の長石・石英・雲母などの石基から出来ています。白川町黒川中切の花崗斑岩は、岐阜県中部に広く分布する濃飛流紋岩類(中生代白亜紀後期に噴出した火山岩類)を貫く岩脈・小岩体で産出しています。

花崗斑岩は岐阜県のみならず日本各地によく見られ、特に珍しい岩石ではありません。しかし、白川町黒川産の花崗斑岩には他所の花崗斑岩とは異なった大きな特徴があります。それは岩石全体が炭酸化作用を受け、斑晶の長石や石基の一部が方解石(炭酸カルシウム)に置き換わっているということです。このような炭酸化作用を受けた花崗斑岩には、青緑色を帯びた新鮮な部分での炭酸カルシウム溶出の効果、それに加え、黄白色の風化した部分では炭酸カルシウムの溶出によってできた多孔質の空隙による吸着作用の効果があり、全体としてたいへんバランスの取れた美味しい水が作られるのです。
(参考文献:「原色岩石図鑑」益富壽之助著(1987)保育者)
1. 昭和61年当時に白川町黒川中切の麦飯石採掘場
(益富壽之助博士 撮影)
2. 現在の白川町黒川の麦飯石採掘場
(佐野剛一 撮影)
3. 岐阜県白川町黒川中切産「麦飯石」
大きな長石の斑晶が特徴である。
4. 麦飯石の偏光顕微鏡写真
炭酸化作用で生成された方解石の干渉色が美しい。

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