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研究員のつぶやき

2025年6月17日

四国地学巡検の報告(その2)
◇3月21日(金) 巡検二日目
 朝8時にホテルルートイン新居浜をバスで出発,この日の最初の目的地である四国中央市土居町の関川中流へ向かいました.
写真1 関川中流のかわら
 この巡検の当初の計画では,二日目は新居浜市国領川にある鹿森ダムの上流の堰堤にたまった石で変成岩類の観察・採集と,別子銅山記念館の見学を予定していましたが,2025年2月の下調査で堰堤にたまった石は堰堤の整備工事でほとんどなく,また別子銅山記念館は改修工事で3月末まで休館ということで断念することになりました.そこで,この日は今までの巡検では行っていない関川の上流と河口付近の海岸に変更しました.
 国道11号線の関の原バス停から赤石山への登山道を南下し,40分ほど歩いて天然記念物『大川の大樟』の200m~300m上流のかわらで観察・採集を行いました(写真1).前日の下流のかわらと比べると石は大きく,高変成度変成岩類のザクロ石角閃岩が多くなります.そのほかにはカンラン岩類・紅簾片岩は多く見つかりますがやはりエクロジャイトは少ないようです.
写真2 ザクロ石が濃集した部分  ザクロ石は径0.5㎜以下と小さいが大きさはほぼ同じ程度で淘汰されています.
 昼前にはバスに戻り,途中コンビニエンスストアで昼食などを仕入れて次の目的地の関川河口近くの海岸へ向かいました.海岸のすぐ近くでバスを降り海岸へ向かうと,広い砂浜には上流や下流で見つかるような変成岩類の手ごろな大きさの標本が採集できます.さらにこの海岸の砂にはザクロ石が多く含まれていて,部分的に濃縮しています(写真2).『日本鉱産誌IV・物理的特性を利用する鉱物(1954,地質調査所編纂)』にはザクロ石砂鉱床として記載されています.この砂を固めて薄片を作り偏光顕微鏡で観察するとザクロ石・角閃石類・輝石類・斜灰簾石~緑簾石・斜長石・石英・磁鉄鉱などを含むことがわかります.当館の巡検では関川へは今まで何度か訪れていますが,この場所は初めてでしたが意外と手軽で楽しいところだと感じました.
 海岸の後は,新居浜市の『マイントピア別子』で見学と休憩をしました.ここには別子銅山の鉱石や操業当時の写真なども展示されています.鉱山施設跡の見学・鉱山鉄道の体験・旧端出場水力発電所見学・東洋のマチュピチュ「東平」のバス見学ツアーなどがあります.
写真5 参加者全員で記念撮影
 休憩の後,西条市を流れる加茂川のかわらへ向かいました.国道11号線に架かる橋付近が目的地で橋のそばにあるコンビニエンスストアの駐車場にバスを停め,かわらに降りました.ここでは市之川公民館の矢野賢誠館長と愛媛県立西条高等学校の生徒さんたちと合流しました.
 このかわらでは,市之川鉱山周辺から流れてきた輝安鉱が見つかることがあり,参加者の多くが輝安鉱を見つけることを目標にされていました.輝安鉱は市之川礫岩という結晶片岩角礫を多く含む礫岩に伴う特徴があります.このかわらではこの礫岩は多くないのですが皆さん熱心に探した結果かなりの方が輝安鉱を発見して歓声が上がっていました.
 このかわらでは様々な結晶片岩類が見つかるのですが,輝安鉱の魅力には勝てないようでした.矢野さんからは輝安鉱の標本をいただき,西条高校からは,市之川鉱山のクリアファイルや人工輝安鉱入りのボールペンをお土産にいただきました.
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