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2026年度

2026年7月25日

鹿児島地学巡検の報告(III)
執筆者 栗山詠太会員 
地学巡検3日目  実施日: 3月17日(火)
 3日目(2026年3月17日)は,JR鹿児島中央駅からバスに乗り,フェリーで桜島へ向かいました.桜島は,姶良カルデラの南縁に約2.6万年前にできた火山島です.フェリーから見えた桜島の山頂はМ字型をしていました.これは,長い時間をかけて火口が移動し,古期の北岳と新期の南岳が重なった結果によるものです.今もその火口は南下し続けています.
遊歩道で大正溶岩の観察
 島の西海岸に降り立った第一印象は,目につく石がとても黒いということでした.これは輝石安山岩を主成分とする大正溶岩で,大正時代に噴出した溶岩です.フェリーを降りて3分ほどの場所に位置する桜島ビジターセンターでは,桜島噴火のメカニズムや歴史について学びました.その後,桜島ビジターセンターから海側に歩いてすぐの遊歩道に向かい,大正溶岩によって形成された地形を観察しました.大正溶岩の表層にはガスが抜けた穴が多数見られ,スポンジ状の構造をしていました.一方,内側は比較的均質で,長石成分がごくわずかに観察でき,その割れた断面は滑らかでした.
湯ノ平展望所床面の航空写真で地形と地質を比較
 桜島ビジターセンターを出発して,バスで少し山を登って湯之平展望所に到着.先ほどよりも山に近づいたことで,その迫力と雄大さに圧倒されました.ここでは,桜島のどの地域がいつの噴火によって形成された地形なのかを,鹿児島地学巡検の資料中の地図と照らし合わせながら学びました.また,地質分布図と展望所床面に展示された航空写真を見比べると,地質の境目が山谷の起伏の深さの違いとして確認できました.ここは外国人観光客にも人気のフォトスポットで,撮影待ちの列ができていました.我々一行もここで集合写真を撮影しました.
有村溶岩展望所から南岳を望む
 次に,反時計回りに島を四半周して南側の有村溶岩展望所へ.西側とは打って変わって火山灰が多く,空気もどこか粉っぽく感じられ,風向きの影響を実感しました.先ほどМ字型に見えた北岳と南岳は,島の南側では重なって見えました.南岳は現在も活発な火山活動を続けており,白い噴煙がもくもくと上がっていたため,とても迫力がありました.有村展望所は大正溶岩の上に整備された展望所ですが,島の西海岸とは異なり岩は全体的に赤みを帯びており,長石成分はほとんど見られませんでした.また,島の西側と比べてより硝子質で,断面はより滑らかで触り心地もすべすべしていました.展望台から南岳の方向に目を向けると,昭和溶岩,大正溶岩,南岳溶岩のそれぞれの上に異なる植生が見られ,火山活動後に自然がどのように回復していくのかを想像することができました.
 有村溶岩展望所を出発して東へ進み,咲花平へ向かいました.咲花平は,1914年の大正噴火によって桜島と大隅半島が陸続きになった境目に位置しています.この地域で見られる地質は約3〜4万年前に形成されたもので,約2.9万年前に発生した姶良カルデラ形成の噴火よりも古いものです.地質的な特徴としては,流紋岩質の火砕流によって形成された堆積物が広く分布している点が挙げられます.咲花平といえば,故益富寿之助先生がこの場所で発見した大隅石が有名です.大隅石は海外でも各地で産出が報告されている中で,日本を模式地とする数少ない鉱物例の一つです.しかし,数年前の工事によって山に立ち入りにくくなってしまったため,残念ながら今回はバスを降りて山の麓で説明を受けるにとどまりました.その後バス車内にて,以前に採取された大隅石の標本と,次の目的地までの途中に近くを通過する桜島溶岩採掘株式会社の採石場で採取された岩石試料を配布していただきました.ちなみに,この採石場は地質図では天平宝字溶岩とされるエリアに位置しています.
黒岩埋没鳥居の観察
 島の北東部には,大正噴火によって埋もれた黒岩埋没鳥居がありました.元来の高さは約3mあった鳥居が,現在は笠木を残して腰よりも低い位置まで火山灰や噴出物に埋まっていました.これまで桜島の噴火によって生み出された地形ばかり観察していたので,人々の生活に残された噴火の爪痕は,巡検最終地ながら非常に印象深いものでした.また,そこでは鳥居自体の石材にも話題が及びました.鳥居は凝灰岩でできているらしく,桜島産の石材ではないのかもしれないという推測も交わされました.
 その後,桜島を一周すべく帰路は島の北側を進みました.北側は南側よりも起伏に富んでおり,旧火口側(北側)の方が,長い年月をかけて山谷の侵食が進み,地形の起伏がより大きくなっていることを感じながらフェリー港へと戻りました.こうしてフェリーで鹿児島市街へ戻り,無事に鹿児島中央駅で解散することができました.3日間にわたる内容の濃い鹿児島地質観察会は幕を閉じました.

2026年7月1日

鹿児島地学巡検の報告(II)
執筆者 大嶋了爾会員 
地学巡検2日目  実施日: 3月16日(月)
 午前8時30分,JR鹿児島中央駅西口の薩摩切子タワー付近に集合し,赤石鉱山へ向けて出発しました.道中,車窓からは広大な茶畑が広がっており,お茶の名産地である鹿児島県ならではの風情を感じることができました.
赤石鉱山の集合写真
◇赤石鉱山(南九州市)
 南九州市にある三井串木野鉱山株式会社の赤石(あけし)鉱山を見学しました.同社生産部採鉱課の大城さんより,鉱山の歴史や鉱床の成り立ち,採掘方法についてご説明いただいた後,日本でも珍しい「南薩型金鉱床」の露天掘採掘場を見学しました.普段見慣れない重機による大規模な採掘の様子は迫力満点で,参加者みな大いに盛り上がりました.
 展望箇所から全景を観察した後は,実際にハンマーを手に取り,鉱石の観察を行いました.筆者は,酸性の熱水によって変質した多孔質の珪化岩(けいかがん)の隙間に産する自然硫黄や黄鉄鉱を確認することができました.かつては坑道採掘も行われていたとのことで,参加者の皆さんも熱心に採集や観察を楽しんでおられました.
川尻海岸の採集風景
◇川尻海岸(オリビンサンド)
 次に,開聞岳(通称「薩摩富士」)の西側に位置する川尻海岸へ移動しました.ここは黒い砂が特徴的ですが,砂浜に降りて目を凝らすと,黒い磁鉄鉱の粒の間に鮮やかな黄緑色の粒が見つかります.これが今回の目玉である「オリビン(olivine/かんらん石)」です.
 藤原先生より観察方法のレクチャーを受けた後,各自ざるや椀を片手に観察を開始しました.大きな粒を探そうと,筆者も夢中で椀をふるいました.天気にも恵まれ,開聞岳を望む絶景の中でとる昼食もまた格別なものでした.
摩藩英国留学生記念館で 説明を聞く様子
◇長崎鼻海岸での砂鉄観察
 続いて,開聞岳の東側に位置する長崎鼻海岸を訪れました.ここはフラワーパークや売店が隣接する観光スポットですが,地質学的にも興味深い場所です.海岸には黒い砂が帯状に堆積しており,磁石を近づけると面白いように砂鉄が引き寄せられる様子を確認できました.長崎鼻・川尻の両海岸浜で採集した砂の粒の大きさや種類が異なっており,とても興味深かったです.
◇山川発電所展示室(指宿市)
 最後の目的地として,指宿市山川にある九電みらいエナジー山川発電所の展示室を見学しました.山川発電所の解説員の方から,地熱発電の仕組みやエネルギー利用についての解説をいただきました.発電所内では,地中から湧き上がる蒸気の力やタービンが回転する音を間近に感じることができました.地域の自然条件を活かした発電方法について学び,私たちの生活と自然環境との関わりを再認識する良い機会となりました.
 一日を通して,薩摩半島の多様な地学的特徴を肌で感じることができました.現在も稼働している鉱山での露天掘り見学,海岸での鉱物観察,そして地下の熱エネルギーの利活用まで,多角的な視点から地域の自然環境を考察する貴重な経験となりました.実際のフィールドに立つことで,文献だけでは得られない深い知見と示唆を得ることができ,大変有意義な一日となりました.

2026年5月17日

鹿児島地学巡検の報告(I)
執筆者 栗山詠太会員 
金山蔵で説明を受ける様子
◇『薩摩金山蔵』見学
 JR鹿児島中央駅を出発し,貸し切りバスで1時間ほどかけていちき串木野市の薩摩金山蔵に到着.当施設は金の採掘を休止している串木野鉱山の坑道跡を鉱山資料館と焼酎の酒蔵として活用したものでした.串木野鉱山は菱刈,佐渡,鴻之舞に次ぐ全国4位の産金量を誇った鉱山で,串木野鉱山の調査陣により広域地質調査が行われ,菱刈鉱山が発見された歴史があり,その影響は計り知れません.
 最初の資料館では串木野鉱山や鹿児島の地質,金の精錬方法などをガイドの田渕さんから説明を受けた後,緑色のトロッコに揺られ約700m坑道を進みました.
坑内へ行くために乗車したトロッコ
坑内は石英脈に沿った金を胚胎する鉱脈が見られただけでなく,実際に使われていたずり運搬用トロッコや巻上げ機などがそのままの姿を残していました.年間を通して温度変化が小さいため,焼酎蔵に有効利用されていて,仄かなアルコールのいい香りが漂っていました.
 トロッコでの復路は往きでは気づかなかったのですが,鉱脈を観察することができました.外の金山蔵の建物は美しい日本庭園になっており,梅の花が見頃で,それを肴に皆さん焼酎の試飲をしながら思い思いのお土産を買っていました.
串木野鉱山の旧トロッコ道にて 鉱石を観察する様子
◇串木野鉱山の旧トロッコ道
 次に三井串木野鉱山の方に案内され,Au品位の低い鉱石を堆積していたという第一捨石場まで移動しました.鉱床は熱水によって緑泥石や方解石になる作用(プロピライト化作用)を受けた輝石安山岩中の浅熱水性含金銀石英-方解石脈であり,確認できるのは安山岩や凝灰角礫岩,石英や方解石.探すのはもちろん石英脈に入る自然金を含有する黒い脈(銀黒鉱)なのですが,紛らわしいものも多くあったため皆さん苦戦していました.1時間半ほどの採集時間で銀黒と思われるものを発見した方はわずかでした.数年前の巡検に参加された方も少なくなったといっておられました.
ちかび記念館前の集合写真
◇ちかび記念館(串木野地下石油備蓄基地)
 次に向かったのは串木野地下石油備蓄基地ちかび記念館.ちょうど高市総理が備蓄石油を放出すると発表した直後のタイムリーな見学先でした.日本で10箇所しかない石油備蓄基地の一つで,石油を地下水圧で閉じ込めるという画期的な方法を取っていました.記念館はタンクに続くトンネルの入口部分をそのまま利用されており,その奥にガラス越しに見える3連ホイールジャンボは圧巻でした.
摩藩英国留学生記念館で 説明を聞く様子
◇薩摩藩英国留学生記念館
 次に訪問したのは薩摩藩英国留学生記念館でした.ここでは鹿児島を「黎明の地」とした19人の留学生についての展示があり案内の南川さんには留学生にまつわる当時の面白いエピソードをしていただきました.串木野鉱山の鉱脈の延長がこの建物付近に位置し,石英脈が数本走っているのが波打ち際で観察できました.このうち明瞭な石英脈は,残念ながら護岸改修により観察できなくなってしまっていました.


 こうして1日目の巡検を無事に終え,鹿児島中央駅で解散しました.
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【開館時間】10:00~16:00
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